極意その9 宝クジ当てンだわ 〜こどおじドリーム〜
水曜日、何故かいつもより早起きしてしまったボキ
時計は8時を指していた
「まだ寝れンだわ」
典型的怠惰の塊であるボキは当然バイトの時間まで二度寝を決意したのだが、スマートフォンくんのバイブレーションに妨げられてしまうのだった
何事かと通知を覗くと友人から
「今日会えるけ?」
とのLINEへの書き込み
朝方、実質ニートなボキはOKと快諾し、11時に友人と会うことになった
この友人は高校・大学時代からの同級生であり、ボキと同じく大学での同学年生からのストーキング、ゼミ教授からの嫌がらせ被害者でもある
悪鬼達の度重なる嫌がらせの結果、最終的にノイローゼになり病院通いになってしまい現在はボキ同様フリーターだ
11時になりそんなフリーター人生終わりだよ組のボキらは堕ちあった
「無残花くん久しぶり、今財布持ってる?お金あるなら宝クジ買いにいかねぇか?」
唐突な宝クジ購入の誘いに思わず吹き出しつつも財布を用意し、とりあえず近場の宝クジ売り場に2人で向かった
目的地の宝クジ売り場につくと先客がいたので遠目から待つことにした
先客は白髪交じりの老婆で齢は60をゆうに超えていることはあきらかだった
「やっぱ宝クジなンて爺婆しか買わねーよな」
若者の宝クジ離れ、というニュースが目新しいゆえの一言だった
友人もうんうんと頷きつつ
「少し宝クジ売り場を観察していかない?どんな客層がくるか知りたいし」
と、陰キャ特有の人間観察を提案したのでボキは了解した
客足が止むまで宝クジ売り場を観察していたが、訪れていたのは約10人ほどで、どれも還暦を超えた老人達だったが、稀に30〜40代と見られる客が来た時は友人とともに
「お、こどおじ仲間かや?」
と、馬鹿みたいな会話をしていた
5分ほどが経ち先客が踵を返したのを確認し、宝クジ売り場にボキらは向かった
いざ宝クジ売り場に行ったものの宝クジ童貞のボキは何を買っていいか、そもそもどうやって買うのかがよく分からなかった
宝クジ当ててンだわ、6億当てるンだわと普段から現実でもネットでも宣っているボキではあるが宝クジを買ったことがない
なのでとりあえず有名どころのロト6を買いたいと売り場のおばさんに言った、すると
「200円になります、番号指定しなくていいですか?」
と、おばさんが問うてきたので質問イコール宣戦布告と捉えたアルティメット陰キャのボキ
「指定なしで」
謎のドヤ顔指定拒否におばさんは訝しみつつコンピュータでの番号指定ロト6を用意してくれた
これで晴れて宝クジ童貞を卒業したボキ、ロト6のついでに地元宝クジも200円で購入したのだった
そんなボキをニヤニヤしながら友人が横から言った
「無残花くん甘いな。ロト6はこう買うんだよ」
と、店頭にあったチェックシートを手にとりサラサラとチェックを埋めドヤ顔でおばさんに提示した
こ、こいつ買い慣れてやがる
どうやらロト6は基本、験担ぎも兼ねてチェックシートの数字を自分で選ぶのが一般的のようだ
しかし、捻くれもののボキは
「は?自分で選んで当てるのは普通!愚民!運という神に問うて当てるのが宝クジなんだよぉ!これが上級第一歩じゃけぇ!」
というなんとも訳の分からんイキリ方をして宝クジ店をともに後にした
宝クジ店を出た後、ボキらは最寄りの公園に向かった
公園は平日の昼間ということもあってか幼児すらもいなかった
そんな閑散とした公園の中、23歳こどおじ2人はともに宝クジへの想いを語らう
地球がどんなに広くても
この瞬間に23歳無職が2人で集って
宝クジへの願い・想いを語らうなんてことをしているのは僕ら以外いないだろう
そんな矮小なプレミアム感を胸に今日もこどおじ達は1日を終える
そんな彼らのロト6は無残にも大ハズレだったとさ
逃げ出した先に楽園なんてありゃしねぇのさ
サンキューガッツ